東北大学大学院薬学研究科の福永浩司教授、岐阜薬科大学の塩田 倫史准教授、京都大学大学院医学研究科の和田 敬仁准教授らの研究グループは、ATR-X症候群の治療薬候補を世界で初めて発見し、その研究内容はNature Medicineにも採択され、国際的に高い評価を得ました。
治療薬候補となる物質は、既に市場で安全性に関する情報が整備されている既存薬、「5-アミノレブリン酸」で、その物質の投与により、ATR-X症候群モデルマウスの知的障がいに有効であることが確認されています。既に栄養剤(サプリメント)として販売されているため、簡単に診療で使われる薬として使われるようになると考えられていました。
しかし、2018年4月の臨床研究法の法律の改正により、たとえ栄養剤であっても症状の改善を目指す用途で使われる場合、医薬品と同じように扱う必要があり、研究を進めるには数千万円の研究費を獲得しなければならないなど、ハードルが高くなってしまいました。その結果、その研究費の獲得を待っている状態で、既に2年も経ってしまいました。
この2年間、自己責任にて既存のサプリメントを飲んでいる患者もおりますが、大きな変化が見られない患者が多く、治療薬として適切に研究・開発されたものができれば効果があるかもしれないのにと、一歩手前まで来たところで立ち止まっている、悔しい状況が続いています。他に同様に既存のサプリメントを飲まれている患者さんの中には、特に小さい年齢の方で、言葉がでたりする等、大きな変化があった方もおり、新しくこの病気を持って生まれてくる他の患者さんには、初期からの適切に開発された治療薬の服用によって、症状が軽度となる可能性もあり、一刻も早い治療薬の確立のために、患者グループとしても署名を集める等の活動をしていく予定です。